「フリーランスに契約書は必要なの?」
「どのような内容を書けばいいのかわからない」
「手間をかけずに契約書を作成したい」
このようなお悩みにお答えします。
口約束やメールでのやりとりで、案件を受注しているフリーランスの方は多いのではないでしょうか。
しかし、自身を守るために契約書は大切です。契約書を交わしていないと、トラブルが起こった際に依頼を受けるフリーランス側の立場が弱くなりがちだからです。
そこでこの記事では、以下の内容を詳しく解説していきます。
- フリーランスに契約書が必要な理由
- 契約書に記載すべき項目
- おすすめの契約書のテンプレート
- 契約書を作成するポイントとよくある疑問の回答
記事を最後まで読めば、契約書がスムーズに作成できるようになるはずです。トラブルを回避して業務に集中するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
フリーランスに契約書が必要な2つの理由
フリーランスに契約書が必要な理由は、主に2つです。
- トラブルを回避するため
- 信頼関係を築くため
それぞれ解説していきます。
1.トラブルを回避するため
契約書は記録として残るので、トラブルの回避に役立ちます。
事前にお互いの権利や義務を明確にしておけば、万が一の事態が発生しても契約書に基づいて対処が可能です。そのため、裁判沙汰や損害賠償の請求などに発展する危険性も抑えられます。
クライアントとのトラブルの原因で多いのは「言った」「言わない」で、双方の意見が食い違うケースです。ビジネスを円滑に進めるには、誰が見ても納得できるように契約書を交わしておく必要があります。
2.信頼関係を築くため
契約書は、クライアントとの信頼関係を築くために大きな役割を果たします。
もし契約書を交わしていないと、後から双方の認識にずれが生じる可能性が高いです。トラブルの際に責任の所在がはっきりしないので、契約が守られない危険性があります。
あらかじめ契約書によって詳細を決めておけば、お互いの心配がない状態で契約を続けられます。信頼関係を築いて業務に集中するためにも、契約書の取り交わしは欠かせません。
フリーランスの契約書に記載すべき13項目
こちらでは、フリーランスの契約書に記載すべき項目を13個に分けて紹介します。
- 業務内容・範囲
- 契約形態
- 契約期間・更新
- 報酬の支払い条件
- 着手金
- 経費
- 再委託
- 不可抗力
- 著作権
- 秘密保持
- 契約の解除
- 損害賠償の義務
- 管轄裁判所
数が多いと感じるかもしれませんが、自身を守るために大切な内容です。事前に把握しておきましょう。
1.業務内容・範囲
業務内容や範囲を明記していないと、想定していない業務まで依頼される可能性があります。職種によっては明記しづらい場合もありますが、できるだけ具体的に決めておくのが重要です。
たとえばホームページ制作の案件では、公開までなのか更新作業まで担うのかを決めておきましょう。
納品後に想定外の業務や修正依頼が来ると他の業務にも支障が出るので、はっきりと決めてください。
2.契約形態
フリーランスの契約形態は、主に3種類があります。
請負契約
請負契約とは、委託した仕事の成果物に対して報酬が支払われる契約です。そのため途中まで作業を進めていても、約束通りに納品されなければ報酬は発生しません。
また、納品後に成果物の不備が発覚した場合、クライアントには修繕要望や損害賠償を請求する権利があります。
具体的には、以下のような職業が請負契約を交わします。
- プログラマー
- デザイナー
- ライター
フリーランスの契約形態において、もっとも一般的だと言えます。
委任契約
委任契約は、クライアントが法律行為を委託する契約を指します。たとえば、弁護士に訴訟提起や遺言書の作成を依頼するケースです。
法律関係の職種以外では、委任契約が交わされることはありません。
準委任契約
準委任契約は、クライアントが法律行為以外の事務を委託する契約です。仕事の成果物ではなく、業務の遂行によって報酬が支払われます。
具体的には、具体的には、以下のような職業が準委任契約を交わします。
- 経営コンサルタント
- セミナー講師
- 広報や宣伝担当
- システムの保守管理
業務の遂行が目的の契約なので、もし結果が出なかった場合でもフリーランス側は報酬を受け取ることが可能です。
3.契約期間・更新
契約期間について明確に取り決めがない場合、契約をいきなり解除されるリスクもあります。業務内容によって契約期間は自由に設定できるので、事前に定めておいてください。
また、更新についての取り決めも欠かせません。もし長期契約をするのであれば、申し出がない限り自動更新するように決めておくのがおすすめです。契約更新に関する、手続きの手間を削減できます。
4.報酬の支払い条件
報酬の支払い条件は、契約書の項目で特に重要です。金銭についてはトラブルになりやすいので、報酬が発生する条件や支払期限などを明記してください。
具体的な報酬金額を記載しない場合は「別途協議の上決定した金額」や「仕様書に定めている通り」とするのも方法の1つです。
また、消費税や源泉徴収といった税金や、振込手数料の負担について決めておくのも忘れないように注意してください。
5.着手金
着手金とは、報酬の一部を先に受け取ることです。それぞれの立場には、以下のメリットがあります。
- フリーランス側:報酬を全額受け取れない心配がなくなる
- クライアント側:支払をしているので仕事を求めやすくなる
ただし、着手金は契約を途中解除した場合の取り決めをしておかないとトラブルの原因になりやすいです。
6.経費
業務のために生じる経費を誰が負担するかも明記が必要です。交通費や備品の購入など、業務内容によっては経費が高額になるケースは珍しくありません。
もし経費がフリーランス側の自己負担だった場合、手元に残る報酬は少なくなってしまいます。また、クライアント側が負担する場合でも、都度支給されるのか、一度立て替えて後日まとめて請求するのかを決めてください。
7.再委託
再委託とは、クライアントに依頼された業務をさらに別の第三者へ委託することです。より効率的に業務を進められる可能性がある一方で、クライアントの意図が伝わりにくくなるリスクもあります。
クライアントの同意なく再委託をするとトラブルになるので、事前に取り決めが必要です。
8.不可抗力
不可抗力とは、病気や事故、災害などを指します。不可抗力により業務を遂行できなかった、もしくは著しく遅延した場合の責任についての項目です。
やむを得ない事情での責任を追求されないために、トラブルを避ける重要な項目の1つです。
9.著作権
著作権は、報酬が支払われた時点で製作者からクライアントに移行する契約が一般的です。しかし契約書で明確にしていないと、トラブルが発生する恐れがあります。
- 二次使用の可否
- 加工できる範囲
- クレジット表記を入れるか
などを決めておきましょう。特に近年では、画像や動画の無断転載によるトラブルが増えているので注意してください。
10.秘密保持
業務上で知り得た開発ノウハウや顧客情報を、不正利用や第三者に口外しない取り決めです。もし違反した場合、損害賠償を請求される恐れがあります。
契約書とは別に、秘密保持契約(NDA)を締結するのも方法の1つです。
11.契約の解除
契約満了以外での解除について取り決めておくと、トラブルの防止に役立ちます。双方が解除の条件に同意していないと話し合いでは折り合いがつかず、裁判をすることになります。
契約を解除する際の予告期間や、契約書で取り決めていないケースの問題が発生した場合は話し合いで解決する旨も記載しておくと安心です。
12.損害賠償の義務
著作権の侵害や情報漏洩が発生した場合、損害賠償を請求される恐れがあります。
フリーランス側は問題が起きないように注意しながら日々の業務を進めるのは当然ですが、念の為に損害賠償の金額をできるだけ小さくするよう交渉するのがおすすめです。
13.管轄裁判所
トラブル発生時に当事者同士で解決できない場合は、裁判になります。そのため、事前に管轄する裁判所を記載しておきます。
特に問題がなければ、双方の中間地点にある裁判所を管轄として設定するとスムーズでしょう。
フリーランスにおすすめの契約書のテンプレート
フリーランスが契約書を作成するには、以下3つのテンプレートがおすすめです。
- bizocean:豊富なパターンが用意されいている
- 無料の文例書式テンプレート集:書式名や文例から検索もできる
- ひな形ジャーナル:Pagesに対応しているのでMacユーザーでも使いやすい
契約書ではさまざまな項目を漏れなく記載する必要がありますが、テンプレートを使用すれば手間なく完成させられます。
フリーランスが契約書を作成する3つのポイント
フリーランスが契約書を作成する際は、以下3つのポイントがあります。
- あいまいな表現は避けて明確に示す
- 想定されるトラブルをすべて記載する
- 専門家に依頼する
順番に見ていきましょう。
1.あいまいな表現は避けて明確に示す
契約書では、あいまいな表現や複数の意味に解釈できる文章で記載すると、さまざまな問題に発展する危険性があります。
特に報酬や著作権に関してはトラブルが発生しやすいため、明確に示しておくと安心です。あいまいな表現ではなく、誰が読んでも同じ意味で理解できるようにするのがポイントです。
2.想定されるトラブルをすべて記載する
どのような職種でも、業務を進めるにはさまざまなトラブルが発生する可能性があります。クライアントと揉めないためにも、契約書では想定されるトラブルをすべて記載してください。
具体的に決めるのが難しい内容は別途契約を結ぶか、話し合いによって解決できるよう記載しておくと安心です。
3.専門家に依頼する
契約書はテンプレートを利用すれば自身でも作成できますが、専門家に依頼するのも方法の1つです。
契約書は法的な効力をもつ書類なので、厳格なルールに従って作成しなければなりません。専門家に依頼すると費用はかかりますが、正確な契約書を作成してもらえます。長期間に及ぶ契約や高額な依頼の場合は、専門家への依頼も検討してみてください。
フリーランスの契約書でよくある3つの疑問
こちらでは、フリーランスの契約書でよくある3つの疑問にお答えします。
- 収入印紙の有無は契約形態によって異なる
- 契約内容を変更したい場合は覚書を作成する
- 電子契約でも問題ない
それぞれ詳しく確認していきましょう。
1.収入印紙の有無は契約形態によって異なる
契約形態が委任契約であれば、契約書に収入印紙は不要です。一方で、請負契約の場合は「第2号文書」「第7号文書」のいずれかに該当するため、収入印紙が必要です。
第2号文書では、契約書に記載された契約金額によって印紙税額が変動する仕組みになっています。詳しい印紙税額は、国税庁の定める規定を確認してください。
継続案件で契約金額の記載がない場合は、第7号文書に該当します。印紙税は一律で4,000円です。
2.契約内容を変更したい場合は覚書を作成する
最初に作成した契約書の内容は、覚書を作成すれば変更できます。覚書とは、契約書の変更点についてまとめて記載する書類です。「変更契約書」や「変更確認書」とも呼ばれます。
覚書の作成にはもちろん、クライアントとの合意が必要です。協議しながら、双方が納得する内容に変更してください。
3.電子契約でも問題ない
フリーランスが作成する契約書は、電子契約でも問題ありません。むしろ、大きなメリットがあります。
契約書を紙で作成した場合、請負契約では収入印紙が必要です。しかし電子契約では収入印紙の貼り付けが不要なので、収入印紙代を節約できます。また、郵送料や交通費もかかりません。さらにスピーディーに契約締結が完了する利点もあるので、電子契約がおすすめです。